こんにちは、あんよメディア編集部のかなです。
今回は発達障害について早川先生にインタビューさせていただきました!
小児科医紹介
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自閉症スペクトラム
自閉症スペクトラムに分類される『自閉症』『高機能自閉症』『アスペルガー症候群』の違いを教えてください。まず発達障害とはどのようなものがありますか?
1940年代ごろから自閉症という概念や言葉ができました。
その後の研究により、それまで言われているような一見典型的な自閉症の特徴はないが、根本的には自閉症の子どもと同じような特徴があり、サポートが必要な子どもたちがいることが判明しました。
そこでそのような子どもたちが、社会の中で必要なサポートを受けられるようにアスペルガー症候群という名前が誕生しました。
つまり、自閉症とアスペルガー症候群の違いは、わかりやすい自閉症なのか、あるいはわかりにくい自閉症なのか、ということになります。ただ一見してわかりやすいかどうかは本質ではありませんので、自閉症か、アスペルガー症候群なのかを検討するのではなく、全体を自閉症からの連続体、つまりスペクトラムとして捉えることが重要と考え、自閉症スペクトラムという名称が使われています。スペクトラムとは虹の帯のようなもので、一見異った2つの色に見えても、その境目は曖昧で、2色には連続性があります。自閉症とアスペルガー症候群もちょうどそれと同じような関係になります。同じ特徴があることはつまり、支援などの方向性も共通することになります。
また高機能自閉症という名称も使われることがあります。高機能とは、知的遅れのない自閉症のことを表しており、自閉症と呼ばれる人たちの半分ぐらいが高機能自閉症だと言われています。
自閉症スペクトラムの原因を教えてください。
考えられる原因として
- 環境的要因
- 遺伝的要因
の二つが考えられます。
環境的要因の影響と、遺伝的要因の影響がそれぞれ半々程度と言われています。
まず、環境的要因ですが、これは胎生期の環境的要因であって、子育てなどの後天的な養育環境の要因ではありません。
例えば妊娠中に服用した薬や飲酒、喫煙などに関してです。による影響なども考えられます。
バルプロ酸ナトリウムというてんかんや躁うつ病に用いる薬などごく一部のものは、自閉症スペクトラム発症との関連が報告されています。また喫煙と注意欠如・多動症(自閉症スペクトラムと併存することが多い神経発達症)との関連も多く報告されています。ですが、これらのごく一部のもの以外では、関連が強く示唆されるものはありません。
バルプロ酸ナトリウムを含め、治療に用いる薬物にはメリット・デメリットがありますので、もし服用されている方で、妊娠等をご希望されている場合は、主治医の先生とご相談してみることをお勧め致します。この環境的な要因によって必ず自閉症スペクトラムになるわけではなく、予測するのは大変難しいです。
近年では、幼児期のワクチン接種が自閉症スペクトラムの発症と関連があるのではないかと唱える人もいますが、これに関して医学的な根拠はありません。むしろ両者の関連を支持しない論文がほとんどで、ワクチン接種を受けないことの悪影響の方が懸念されています。
次に遺伝的要因ですが、自閉症スペクトラムに影響を与える遺伝子はおよそ100種類程存在すると言われています。
ですが、それぞれの変異の影響は大きくはなく、複数の変異の組み合わせで、自閉症スペクトラムの脳の特徴が生じると考えられています。現時点で、その遺伝子の組み合わせを予測することは難しいです。
またあるお子さんが自閉症スペクトラムと診断されてから、親やきょうだい、親戚の他のものにも自閉症スペクトラムがあることに気付かれる場合も多くあります。こうした場合、その特徴が、専門職などむしろ強みとしていかされているケースなどにもよく出逢います。したがって特性を有していること自体に良し悪しや優劣はありません。
自閉症スペクトラムと診断できるのはいつ頃ですか?
自閉症スペクトラムと診断することが可能となるのは、臨床的には1歳半〜2歳半ぐらいです。
しかし自閉症スペクトラムではないかと気付く時期は人それぞれで、例えば以下のようなタ場合が挙げられます。
- 言葉の喋りだし(発語)が遅い、こだわり・癇癪が多い、多動で目が離せない
- 幼稚園に入園し初めての集団生活にうまくのれない
- 小学校入学など就学し、学業上の問題や片付けなど身の回りの管理ができない
- 不登校やひきこもりの状態になる
- 大学のレポート・卒論が計画的にこなせない、出席日数が足りない、就活がうまくいかない
- 結婚や出産によってやることが増えたり生活パターンが変わり抑鬱うつ状態になる
- 中間管理職のポジションについたが周りを采配できず抑うつ状態になる
自閉症スペクトラムかもと気付くポイントとしては、幼児期であれば自閉症スペクトラムの特性自体から相談につながる場合が多く、学童期以降だと学校などへの適応が難しいことが発端となる場合が多いです。さらに青年・成人期以降だと抑うつ状態など、他の精神医学的な問題を併発し、その治療などの過程で診断されることが多いです。
何人ぐらいの割合で自閉症スペクトラムと診断されるのでしょうか?
自閉症スペクトラムと診断される確率は数パーセントです。
つまり1クラスの1人ぐらいの割合です。
自閉症スペクトラムだと診断される子どもの人数は増えているのでしょうか?
はい、自閉症スペクトラムの有病率は年々上昇しています。
有病率が上昇している確実な理由は以下の2つが考えられます。
- 自閉症スペクトラムに対する啓発活動が進んでいる
- 診断基準が明確になってきており、医師側にも診断するうえで必要な視点が身についてきた
ですが、診断された子どもが増えていることは確実ですが、実際自閉症スペクトラムの子どもが増えているかどうかは正確な根拠がないためはっきりとしたところはわからないままです。