【徹底解説】そもそも発達障害とは?

こんにちは、徳島大学医学部5年の福本です!

今回は自閉症スペクトラムについて宇野先生にインタビューさせていただきました!

 

専門家紹介

宇野洋太先生(よこはま発達クリニック)

専門:発達障害

<略歴> 
東京医科歯科大学医学部附属病院精神神経科/横須賀共済病院/東京都立梅ヶ丘病院/名古屋大学医学部附属病院親と子どもの心療科/ハーバード大学医学部精神科・マクリーン病院(米国)/バース大学心理学部(英国)/よこはま発達クリニック 副委員長

自閉症スペクトラム

あんよメディア編集部 かなあんよメディア編集部 かな

自閉症スペクトラムに分類される『自閉症』『高機能自閉症』『アスペルガー症候群』の違いを教えてください。

1940年代ごろから自閉症という概念や言葉ができました。

その後の研究により、それまで言われているような一見典型的な自閉症の特徴はないが、根本的には自閉症の子どもと同じような特徴があり、サポートが必要な子どもたちがいることが判明しました。

そこでそのような子どもたちが、社会の中で必要なサポートを受けられるようにアスペルガー症候群という名前が誕生しました。

 

つまり、自閉症とアスペルガー症候群の違いは、わかりやすい自閉症なのか、あるいはわかりにくい自閉症なのか、ということになります。ただ一見してわかりやすいかどうかは本質ではありませんので、自閉症か、アスペルガー症候群なのかを検討するのではなく、全体を自閉症からの連続体、つまりスペクトラムとして捉えることが重要と考え、自閉症スペクトラムという名称が使われています。スペクトラムとは虹の帯のようなもので、一見異った2つの色に見えても、その境目は曖昧で、2色には連続性があります。自閉症とアスペルガー症候群もちょうどそれと同じような関係になります。同じ特徴があることはつまり、支援などの方向性も共通することになります。

 

また高機能自閉症という名称も使われることがあります。高機能とは、知的遅れのない自閉症のことを表しており、自閉症と呼ばれる人たちの半分ぐらいが高機能自閉症だと言われています

 

あんよメディア編集部 かなあんよメディア編集部 かな

自閉症スペクトラムの原因を教えてください。

考えられる原因として

  • 環境的要因
  • 遺伝的要因

の二つが考えられます。

環境的要因の影響と、遺伝的要因の影響がそれぞれ半々程度と言われています。

まず、環境的要因ですが、これは胎生期の環境的要因であって、子育てなどの後天的な養育環境の要因ではありません。
例えば妊娠中に服用した薬や飲酒、喫煙などに関してです。による影響なども考えられます。

バルプロ酸ナトリウムというてんかんや躁うつ病に用いる薬などごく一部のものは、自閉症スペクトラム発症との関連が報告されています。また喫煙と注意欠如・多動症(自閉症スペクトラムと併存することが多い神経発達症)との関連も多く報告されています。ですが、これらのごく一部のもの以外では、関連が強く示唆されるものはありません。

バルプロ酸ナトリウムを含め、治療に用いる薬物にはメリット・デメリットがありますので、もし服用されている方で、妊娠等をご希望されている場合は、主治医の先生とご相談してみることをお勧め致します。この環境的な要因によって必ず自閉症スペクトラムになるわけではなく、予測するのは大変難しいです。

近年では、幼児期のワクチン接種が自閉症スペクトラムの発症と関連があるのではないかと唱える人もいますが、これに関して医学的な根拠はありません。むしろ両者の関連を支持しない論文がほとんどで、ワクチン接種を受けないことの悪影響の方が懸念されています。

次に遺伝的要因ですが、自閉症スペクトラムに影響を与える遺伝子はおよそ100種類程存在すると言われています。

ですが、それぞれの変異の影響は大きくはなく、複数の変異の組み合わせで、自閉症スペクトラムの脳の特徴が生じると考えられています。現時点で、その遺伝子の組み合わせを予測することは難しいです。

 

またあるお子さんが自閉症スペクトラムと診断されてから、親やきょうだい、親戚の他のものにも自閉症スペクトラムがあることに気付かれる場合も多くあります。こうした場合、その特徴が、専門職などむしろ強みとしていかされているケースなどにもよく出逢います。したがって特性を有していること自体に良し悪しや優劣はありません。

 

あんよメディア編集部 かなあんよメディア編集部 かな

発達障害の原因は判明しているのでしょうか?

実は発達障害は原因が明確にはわかっていません。しかし、子育てが原因で発達障害になることもありません。

診断

あんよメディア編集部 かなあんよメディア編集部 かな

発達障害は何歳ぐらいで診断がつくのでしょうか?

当院では、自閉スペクトラム症(ASD)であれば1歳から診断することが可能です。 

また、注意欠陥・多動症、限局性学習症などは6歳以降に診断することが多いです。 

診断が確定しなくても、長所や強みは把握するので、「様子を見ましょう」ということは、当院ではありません。今すぐできる支援方法をお伝えします。ただ、診断する時期やタイミングは、医療機関によって差があるようです。

特徴

あんよメディア編集部 かなあんよメディア編集部 かな

発達障害の子どもの特徴を教えてください。

発達の各領域の凸凹や質の違いが特徴です。発達上の得意不得意の偏りと捉える事もあります。 

社会性、コミュニケーション、社会的想像力や柔軟な思考、多動・衝動・不注意、読み書き計算などの領域が、他の領域と比べて極端に苦手な場合や、遅れはないけれど、質的な違いがある場合をさします。 

 具体的には、その場の空気を読まない、相手に合わせることが難しい、指示が通りにくくマイペース、急な変更や初めての活動が苦手、興味の持ち方や遊び方の違い、感覚の過敏や鈍麻、走り回り、手が出る、ケンカが多い、忘れ物が多い、物をよくなくす、整理整頓が苦手、文字の読み書きが極端に苦手、不器用などです。 

 この発達上の質の違いというのは、何かができないことではありません。例えば、自閉症の子は『視線が合わない』と思っている人が多いです。視線を合わせることはありますが、合わせ方が違う、という意味です。自分が話すときに、相手の顔を見なかったり、困ったときに何も言わずただ相手を凝視するだけのことがあったりします。 

セルフチェック

あんよメディア編集部 かなあんよメディア編集部 かな

セルフチェックはすることができますか?また効果がありますか?

保護者がお子さんの行動を見て、セルフチェックに記入して判断するようなサイトがあります。しかし、多くのチェックシートは質問が不完全ですし、記入者の主観が入るのでおすすめはしていません。  

例えば、上述の視線の例では、セルフチェックで「視線が合いますか?」という質問に対して、どのような形でも、視線が合いさえすれば「合う」にYesとしてしますので、質的な問題はセルフチェックでは漏れてしまいます。つまり、本当は発達障害の可能性があるかもしれないお子さんが、セルフチェックによって、「問題ない」と判断されてしまう可能性があるということです。やはり、専門家にお子さんを見てもらって判断してもらうのがよいと思います。 

療育

あんよメディア編集部 かなあんよメディア編集部 かな

療育ではどのようなことをするのですか?

私どものクリニックの考え方をご説明します。発達障害のお子さんは、ひとりひとり凸凹具合も、得意不得意も大きく異なります。正確な診断・評価と、お子さんに合った成長の目標を立てます。そして、厳しくするのではなく、楽しく、見てわかる方法で教えていきます。その子にとって、意味のあるものを教えていきます。 

そのときにはまだ無理な課題を厳しく教えて失敗をさせることは避けましょう。発達障害のお子さんは記憶力が良く、一度失敗してしまうと、その失敗経験を恐れて失敗しないように生きる方向性になってしまうことがあるからです。 

しかし、失敗が全て悪いということではありません。本人の意思で挑戦したことは、例え失敗して悔しくても、次への向上心とつなげることもできます。つまり、自分で納得して、自分の意思で行動できるように手助けしていくことも大切だということです。 

また、発達障害のお子さんは全てに劣っているわけではなく、必ず強みや長所があるため、この強みを活かすような指導を心がけています。例えば、言葉での指示ではなく、物を使ったり、絵や写真を見せるなど、視覚の理解の強さをいかした方法をとるようなことがよいようです。 

具体的な療育の内容としては、集団行動のスキル、コミュニケーションスキルや身辺自立(トイレトレーニング、着替え、歯磨きなど)の向上などですが、何をどのようにやるのかは施設によって様々です。

あんよメディア編集部 かなあんよメディア編集部 かな

療育をする施設はどのようなものがありますか?

  • 児童発達支援 
  • 児童発達支援センター 
  • 放課後等デイサービス 
  • 医療機関 
  • 地域の療育センター  

療育内容は、施設の特色や療育方針の違いもあり、施設によってかなり差があります。

あんよメディア編集部 かなあんよメディア編集部 かな

療育に年齢制限はあるのでしょうか?

療育とは治療教育の略称ですが、支援や配慮と考えると、ずっと必要なもので、年齢制限はありません。  

ただ、制度としての療育という意味では、施設によって年齢制限はあります。 

例えば、児童発達支援は6歳まで、放課後等デイサービスと呼ばれるところは、ほとんどが6歳から18歳までのお子さんを対象にしています。詳しくは、それぞれの施設のホームページなどを参照されるとよいでしょう。

医療機関

あんよメディア編集部 かなあんよメディア編集部 かな

病院を受診するか迷った時の判断基準を教えてください。

お子さんが生きづらさを感じていたり、保護者の方が子育てしづらいと感じていたら、病院を受診することをおすすめします。 

また、保育園や幼稚園、小学校の先生から、集団行動でお子さんの対応に困っていると言われた場合も、病院の受診を検討してみてください。 

 どの保護者にとっても、受診することは、とても勇気のいることです。しかし、もし、受診せずにいて、その子が本来手に入れることができたはずの支援や支援のアイデア、支援者との出会いがなくなってしまったら、それはその子の人生にとっても影響があるかもしれません。その子らしく生きていけることの道を一緒に探してくれる場を求める、という気持ちで、受診してみてがいかがでしょうか。

あんよメディア編集部 かなあんよメディア編集部 かな

最初は地域の療育センターなどではなく小児科を受診したほうがいいのでしょうか?

どこに受診すべき、という決まりはありません。風邪などでかかりつけの小児科を受診した際に、まずはご相談されるのもよいでしょう。 

乳幼児の健診で、地域の療育センターに通うことをおすすめされ、その後に病院を受診し診断をしてもらう場合もあります。  

また、幼稚園や保育園への就園後や、小学校に入学後に、担任の先生から受診を勧められ、病院に来られる場合もあります。

あんよメディア編集部 かなあんよメディア編集部 かな

診断の重要性とはなんでしょうか?

診断評価、支援方針、支援の具体的な方法をお伝えし、必要な知識を提供するのが医療機関の役目です。  

診断はいらない、とおっしゃる方もおられるのですが、診断がなくてもいいといというわけではなく、診断があることによって、対処方法を変えることができます。 

当院では、診断とその後の支援の方針はセットで伝えます。診断が違えば、対処方法も異なってきます。診断は、適切な支援を考えるために必要だからです。少し事例を紹介しましょう。  

例えば、離席という行動の場合です。 
(※離席とは授業中に席を離れどこかに移行する行動のことを指します。) 

自閉スペクトラム症(ASD)のお子さんはゆっくり動いて、学校の先生の目を気にせず授業以外の楽しみを見つけに行ってしまいます。単に、授業に興味がないからです。注意されても、「しまった」という感じに見えません。 

一方で、注意欠如多動症(AD/HD)のお子さんは、ぱっと飛び出すような衝動的に行動しますが、学校の先生などに止められた場合「しまった!」と思い、席に戻ることができます。うっかりしていた、という自覚があるからです。 

このように、発達障害の種類によって、見えている行動は同じでも、原因が違うことがあるわけです。そうすると、当然、対処方法も変わってきますね。 

だからこそ、お子さんの行動上の問題の対処を考えるときに、正確な診断が必要になるのです。そして、その診断に合った支援方法を提供していくことが、大切です。

あんよメディア編集部 かなあんよメディア編集部 かな

どのような医療機関を受診すると良いのでしょうか?

成育歴や現在の様子をしっかり聞いてもらえて、お子さんを直接しっかりと時間をかけて観察したり評価してくれたりする医療機関をお勧めします。 

 また、投薬に頼らず、具体的なアドバイスをしてくれるところもおすすめです。 

診断の時期やその後のアドバイス、支援方法は医療機関によって様々です。保護者の納得できる説明をしてくださるような医療機関がよいのではないでしょうか。一般論や理屈よりは、その子に合った支援方法の情報を具体的に教えてくれる人に出会えるといいと思います。 

自己認知

あんよメディア編集部 かなあんよメディア編集部 かな

自己認知させることに適したタイミングはあるのでしょうか?

お子さんが成長していくと、自分と他人の違いに気が付くようになります。お子さん自身に、発達障害の特性や支援方法を伝えることを、自己認知支援と言います。いつまでに、という決まったタイミングはありませんが、遅くなればなるほど難しくなってきます。 

プリズムベルクリニックでの自己認知支援の方法をご説明します。これは、その子についての取扱説明書とも、自分研究ともいえる世界に一つだけの一冊の本を、保護者と医師とで作ります。45分×5回ほどの時間を診察時間で予約していただき、個別に取り組みます。(ペアレント・プログラムの一つとして行っています。)完成したら診察室で本人に渡し、読んでもらうというものです。 

お伝えする年齢は、平均すると、大体8〜9歳ぐらいで行うことが多いです。思春期までには、お伝えしたいですね。お子さんの中には、自己認知支援を行うと、自分のことを保護者が大切に思っていてくれたことを再認識して、感謝の言葉を述べてくれることがあります。

Message

あんよメディア編集部 かなあんよメディア編集部 かな

最後に読者の方に向けてメッセージをお願いします。

今、お子さんのことで悩んで見える保護者の皆様へ。毎日の暮らしの中で、解決できない問題や心配なことがあると思います。子育てがなかなかうまくいかない理由は、保護者の努力不足ではなく、必要なのは子育ての新しい視点だと思います。新しい視点でお子さんを見つめなおし、一緒にお子さんのサポートを考えてくれる人や場は、きっとあるので、少しだけ勇気を出して、相談してみてください。 

そして、困った行動を治す、という考えではなく、お子さんが、なぜそのような行動をするのか理由をつかみ、お子さんが何に困っていたのか、お子さんがどうしたかったのかを考えてみましょう。 

そして、支援を行うに当たっては、まず環境調整を行いましょう。それから、お子さんの長所や強みをいかした支援を行っていきましょう。決して、特訓や訓練にならないように気を付けましょう。 

教える大人も、教わる子どもも楽しく学べる場、そこがその子の正解の場でしょうね。そうした支援の場や、支援のアイデアを持っている人との出会いを大切にしましょう。保護者の方が、どんな支援者と出会うのかは、お子さんにとっても、とても大きいです。みなさんが、素敵な支援者と出会われ、お子さんも保護者も笑顔で過ごせるように願っています。 

プリズムベルクリニック 早川星朗

本記事はインタビューに基づくものですが、早川先生に後日加筆していただいております。