【徹底解説】そもそも発達障害とは?

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こんにちは、あんよメディア編集部のかなです。
今回は発達障害について早川先生にインタビューさせていただきました!

専門家紹介

早川星朗 先生(プリズムベルクリニック)

専門:発達障害

<略歴> 
岐阜大学医学部 卒業/養老中央病院/高山赤十字病院/愛媛労災病院/下呂温泉病院/豊橋東病院/京都市児童福祉センター/東海市民病院/ロイヤルベルクリニック小児科発達外来/令和2年より現職 

発達障害

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まず発達障害とはどのようなものがありますか?

発達障害と言われているものは 

  • 自閉症スペクトラム症(ASD) 
  • 注意欠如・多動症(AD/HD) 
  • 限局性学習症(SLD) 
  • 発達性協調運動症(DCD) 

上記の他に知的障害(MR)も含め発達障害とする考え方もあります。 

当院では、知的障害だけの方の診療のご相談も受けています。 

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これらの発達障害は、はっきりと診断することが可能なのでしょうか?

医学的には、DSM-5や、ICD-10といった国際的な診断基準で定義されて、分類されています。 
実際には診断基準には曖昧な記載が多く、診断基準を読むだけでは正確に診断するのが難しい場合が多いです。 

そこで、誤診をなくすために、プリズムベルクリニックでは、保護者の方にあらかじめ詳しい成育歴のアンケートを送って提出してもらい、初診で、60分お話を伺っています。同時に、お子さんの行動観察を60分ほど行い、その結果を報告書にまとめてお渡しした上で、後日、診断と支援方針を60分かけてお伝えしています。そうすることによって、ほとんどの発達障害は診断がつきます。 

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発達障害の原因は判明しているのでしょうか?

実は発達障害は原因が明確にはわかっていません。しかし、子育てが原因で発達障害になることもありません。

診断

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発達障害は何歳ぐらいで診断がつくのでしょうか?

当院では、自閉スペクトラム症(ASD)であれば1歳から診断することが可能です。 

また、注意欠陥・多動症、限局性学習症などは6歳以降に診断することが多いです。 

診断が確定しなくても、長所や強みは把握するので、「様子を見ましょう」ということは、当院ではありません。今すぐできる支援方法をお伝えします。ただ、診断する時期やタイミングは、医療機関によって差があるようです。

特徴

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発達障害の子どもの特徴を教えてください。

発達の各領域の凸凹や質の違いが特徴です。発達上の得意不得意の偏りと捉える事もあります。 

社会性、コミュニケーション、社会的想像力や柔軟な思考、多動・衝動・不注意、読み書き計算などの領域が、他の領域と比べて極端に苦手な場合や、遅れはないけれど、質的な違いがある場合をさします。 

 具体的には、その場の空気を読まない、相手に合わせることが難しい、指示が通りにくくマイペース、急な変更や初めての活動が苦手、興味の持ち方や遊び方の違い、感覚の過敏や鈍麻、走り回り、手が出る、ケンカが多い、忘れ物が多い、物をよくなくす、整理整頓が苦手、文字の読み書きが極端に苦手、不器用などです。 

 この発達上の質の違いというのは、何かができないことではありません。例えば、自閉症の子は『視線が合わない』と思っている人が多いです。視線を合わせることはありますが、合わせ方が違う、という意味です。自分が話すときに、相手の顔を見なかったり、困ったときに何も言わずただ相手を凝視するだけのことがあったりします。 

セルフチェック

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セルフチェックはすることができますか?また効果がありますか?

保護者がお子さんの行動を見て、セルフチェックに記入して判断するようなサイトがあります。しかし、多くのチェックシートは質問が不完全ですし、記入者の主観が入るのでおすすめはしていません。  

例えば、上述の視線の例では、セルフチェックで「視線が合いますか?」という質問に対して、どのような形でも、視線が合いさえすれば「合う」にYesとしてしますので、質的な問題はセルフチェックでは漏れてしまいます。つまり、本当は発達障害の可能性があるかもしれないお子さんが、セルフチェックによって、「問題ない」と判断されてしまう可能性があるということです。やはり、専門家にお子さんを見てもらって判断してもらうのがよいと思います。 

療育

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療育ではどのようなことをするのですか?

私どものクリニックの考え方をご説明します。発達障害のお子さんは、ひとりひとり凸凹具合も、得意不得意も大きく異なります。正確な診断・評価と、お子さんに合った成長の目標を立てます。そして、厳しくするのではなく、楽しく、見てわかる方法で教えていきます。その子にとって、意味のあるものを教えていきます。 

そのときにはまだ無理な課題を厳しく教えて失敗をさせることは避けましょう。発達障害のお子さんは記憶力が良く、一度失敗してしまうと、その失敗経験を恐れて失敗しないように生きる方向性になってしまうことがあるからです。 

しかし、失敗が全て悪いということではありません。本人の意思で挑戦したことは、例え失敗して悔しくても、次への向上心とつなげることもできます。つまり、自分で納得して、自分の意思で行動できるように手助けしていくことも大切だということです。 

また、発達障害のお子さんは全てに劣っているわけではなく、必ず強みや長所があるため、この強みを活かすような指導を心がけています。例えば、言葉での指示ではなく、物を使ったり、絵や写真を見せるなど、視覚の理解の強さをいかした方法をとるようなことがよいようです。 

具体的な療育の内容としては、集団行動のスキル、コミュニケーションスキルや身辺自立(トイレトレーニング、着替え、歯磨きなど)の向上などですが、何をどのようにやるのかは施設によって様々です。

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療育をする施設はどのようなものがありますか?

  • 児童発達支援 
  • 児童発達支援センター 
  • 放課後等デイサービス 
  • 医療機関 
  • 地域の療育センター  

療育内容は、施設の特色や療育方針の違いもあり、施設によってかなり差があります。

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療育に年齢制限はあるのでしょうか?

療育とは治療教育の略称ですが、支援や配慮と考えると、ずっと必要なもので、年齢制限はありません。  

ただ、制度としての療育という意味では、施設によって年齢制限はあります。 

例えば、児童発達支援は6歳まで、放課後等デイサービスと呼ばれるところは、ほとんどが6歳から18歳までのお子さんを対象にしています。詳しくは、それぞれの施設のホームページなどを参照されるとよいでしょう。

医療機関

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病院を受診するか迷った時の判断基準を教えてください。

お子さんが生きづらさを感じていたり、保護者の方が子育てしづらいと感じていたら、病院を受診することをおすすめします。 

また、保育園や幼稚園、小学校の先生から、集団行動でお子さんの対応に困っていると言われた場合も、病院の受診を検討してみてください。 

 どの保護者にとっても、受診することは、とても勇気のいることです。しかし、もし、受診せずにいて、その子が本来手に入れることができたはずの支援や支援のアイデア、支援者との出会いがなくなってしまったら、それはその子の人生にとっても影響があるかもしれません。その子らしく生きていけることの道を一緒に探してくれる場を求める、という気持ちで、受診してみてがいかがでしょうか。

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最初は地域の療育センターなどではなく小児科を受診したほうがいいのでしょうか?

どこに受診すべき、という決まりはありません。風邪などでかかりつけの小児科を受診した際に、まずはご相談されるのもよいでしょう。 

乳幼児の健診で、地域の療育センターに通うことをおすすめされ、その後に病院を受診し診断をしてもらう場合もあります。  

また、幼稚園や保育園への就園後や、小学校に入学後に、担任の先生から受診を勧められ、病院に来られる場合もあります。

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診断の重要性とはなんでしょうか?

診断評価、支援方針、支援の具体的な方法をお伝えし、必要な知識を提供するのが医療機関の役目です。  

診断はいらない、とおっしゃる方もおられるのですが、診断がなくてもいいといというわけではなく、診断があることによって、対処方法を変えることができます。 

当院では、診断とその後の支援の方針はセットで伝えます。診断が違えば、対処方法も異なってきます。診断は、適切な支援を考えるために必要だからです。少し事例を紹介しましょう。  

例えば、離席という行動の場合です。 
(※離席とは授業中に席を離れどこかに移行する行動のことを指します。) 

自閉スペクトラム症(ASD)のお子さんはゆっくり動いて、学校の先生の目を気にせず授業以外の楽しみを見つけに行ってしまいます。単に、授業に興味がないからです。注意されても、「しまった」という感じに見えません。 

一方で、注意欠如多動症(AD/HD)のお子さんは、ぱっと飛び出すような衝動的に行動しますが、学校の先生などに止められた場合「しまった!」と思い、席に戻ることができます。うっかりしていた、という自覚があるからです。 

このように、発達障害の種類によって、見えている行動は同じでも、原因が違うことがあるわけです。そうすると、当然、対処方法も変わってきますね。 

だからこそ、お子さんの行動上の問題の対処を考えるときに、正確な診断が必要になるのです。そして、その診断に合った支援方法を提供していくことが、大切です。

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どのような医療機関を受診すると良いのでしょうか?

成育歴や現在の様子をしっかり聞いてもらえて、お子さんを直接しっかりと時間をかけて観察したり評価してくれたりする医療機関をお勧めします。 

 また、投薬に頼らず、具体的なアドバイスをしてくれるところもおすすめです。 

診断の時期やその後のアドバイス、支援方法は医療機関によって様々です。保護者の納得できる説明をしてくださるような医療機関がよいのではないでしょうか。一般論や理屈よりは、その子に合った支援方法の情報を具体的に教えてくれる人に出会えるといいと思います。 

自己認知

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自己認知させることに適したタイミングはあるのでしょうか?

お子さんが成長していくと、自分と他人の違いに気が付くようになります。お子さん自身に、発達障害の特性や支援方法を伝えることを、自己認知支援と言います。いつまでに、という決まったタイミングはありませんが、遅くなればなるほど難しくなってきます。 

プリズムベルクリニックでの自己認知支援の方法をご説明します。これは、その子についての取扱説明書とも、自分研究ともいえる世界に一つだけの一冊の本を、保護者と医師とで作ります。45分×5回ほどの時間を診察時間で予約していただき、個別に取り組みます。(ペアレント・プログラムの一つとして行っています。)完成したら診察室で本人に渡し、読んでもらうというものです。 

お伝えする年齢は、平均すると、大体8〜9歳ぐらいで行うことが多いです。思春期までには、お伝えしたいですね。お子さんの中には、自己認知支援を行うと、自分のことを保護者が大切に思っていてくれたことを再認識して、感謝の言葉を述べてくれることがあります。

Message

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最後に読者の方に向けてメッセージをお願いします。

今、お子さんのことで悩んで見える保護者の皆様へ。毎日の暮らしの中で、解決できない問題や心配なことがあると思います。子育てがなかなかうまくいかない理由は、保護者の努力不足ではなく、必要なのは子育ての新しい視点だと思います。新しい視点でお子さんを見つめなおし、一緒にお子さんのサポートを考えてくれる人や場は、きっとあるので、少しだけ勇気を出して、相談してみてください。 

そして、困った行動を治す、という考えではなく、お子さんが、なぜそのような行動をするのか理由をつかみ、お子さんが何に困っていたのか、お子さんがどうしたかったのかを考えてみましょう。 

そして、支援を行うに当たっては、まず環境調整を行いましょう。それから、お子さんの長所や強みをいかした支援を行っていきましょう。決して、特訓や訓練にならないように気を付けましょう。 

教える大人も、教わる子どもも楽しく学べる場、そこがその子の正解の場でしょうね。そうした支援の場や、支援のアイデアを持っている人との出会いを大切にしましょう。保護者の方が、どんな支援者と出会うのかは、お子さんにとっても、とても大きいです。みなさんが、素敵な支援者と出会われ、お子さんも保護者も笑顔で過ごせるように願っています。 

プリズムベルクリニック 早川星朗

本記事はインタビューに基づくものですが、早川先生に後日加筆していただいております。